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突撃!体験レポート

教育について

子どもが勉強をしなければいけない理由とは?義務教育って何だろう

【義務教育】という言葉があります。子どもは、小学校・中学校の9年間、教育を受けることが、日本では法律で定められています。

この「義務」は、子どもに発生するものではありません。子どもを養育する責任のある保護者、国、市区町村に発生します。

義務教育とは「保護者・国・自治体は子どもに、基本的な9年間の教育を受けさせなければならない」という義務であり、子どもが勉強しなければいけない義務ではありません。

それなのになぜ、子どもは勉強しなければいけないのでしょうか。

子どもに発生するのは「勉強する権利」

子どもに発生するのは、「勉強をしなければならない」という義務ではなく、「基本的な9年間の教育を受けられる」という権利です。

「義務教育って言うんだから、勉強は子どもの仕事」と言ったりしますが、子どもに勉強の義務は無いのです。

しかし、国は法律で「保護者や国・自治体は、子どもに教育を受けさせなければならない」と定めているため、結局すべての子どもは義務教育を受けることになります。

では、なぜ親、そして国は子どもに教育を受けさせなければならないのでしょうか。

 

義務教育の意味

義務教育の意味は、「学校教育法」の第21条という法律に定められています。

10項目に分かれており、簡略化すると以下のような内容です。

 

1. 学校での社会活動によって、自主性や自律性、公正な判断力など、社会で生きていくにふさわしい道徳心を身につける

2. 学校の授業などを通して自然と触れ合い、生命や環境、自然を大切にし、守ることの重要性を学ぶ

3. 地域や日本の歴史・現状を正しく学び、伝統や文化を尊重し受け継ぐ心、そして他国の文化を理解しようとする心をやしなう

4. 家族と家庭、私たちの生活を支える衣食住をはじめ、産業や情報など社会の基礎構造を理解する

5. 読書に親しみ、国語を正しく学ぶ

6. 生活に必要な数・計算を理解・処理できるようになる

7. 生活にかかわる自然・災害などについて科学的に理解し、対処する知識を身につける

8. 健康に、安全に、そして幸福に生きていくために必要な習慣を身につけ、運動によって心身を健やかに保つ

9. 人生を豊かにする音楽や美術・文芸などの芸術について、基礎的な理解力と技能を身につける

10. さまざまな職業や働くことの重要性を学び、将来の進路を決める力をやしなう

 
日本の国家が考える「子どもが勉強しなければならない理由」が、この中に詰まっていると言っても良いでしょう。

義務教育は社会の仕組みと自分の立ち位置を知る「学び」

社会の授業では、今日の食卓に乗った晩ご飯が、どのように生産されて流通し、我が家にやってきたのかを知ることができます。

歴史なら、日本や諸外国が歩んできた歴史を学びます。私たちが生きている現代が、どのようにはぐくまれてきたのかをはじめ、戦争や核など、絶対に繰り返してはいけない失敗の歴史も学びます。

理科なら、台風や地震の仕組みなどを知り、どうすれば自分や家族を災害から守ることができるかを考える基盤となるでしょう。

そして、最終的には社会人として就職することが目標となっています。

国が考える【子どもが勉強しなければならない意義】

上に挙げた「学校教育法 第21条」からは、「道徳心や自分の心身を健やかに保ち、正しいことを判断する力をやしなうこと」や、「基本的な国・社・数・理・(英)力を身につけること」を学ぶために義務教育があることがわかります。

 

 

社会のルールや自分の心身の健康、他者の尊厳を守りながら、しっかり働くことができ、身の安全も守ることができる社会人を育てることが、義務教育の目的と言えます。

これは普通学級に通う子どもたちだけのものではありません。盲・聾・特別支援学校に通う子ども達も、支援方法を工夫しつつ同じ目的に向かって教育を行っています。

いずれ国を支える国民を育てるために、義務教育は制定されています。

国民の中には総理大臣をはじめ、議員や官僚として国の運営に関わっていく人もいます。また医学や科学、産業や文化などをけん引していく人材もいます。

しかし本当に大切なのは、ごく一部の特殊な人材を育てることではありません。

すべての国民が、ある程度の道徳心や判断力を身につけ、社会人として自分のスキルに合った職業を見つけ、居場所を得るための力を身につけることで、社会全体の安全や健全さ、人々の幸福が守られていくのです。

学校が考える「勉強する意義」

それでは、教育の現場である学校は、勉強する意義をどのように捉えているのでしょうか。子どもを学校に通わせている間に、学校の意図がいろいろと見えてきます。

 

学校によって異なる特色

学校には、どの小学校・中学校もそれぞれの「色」があります。それはその小学校がある土地が、古くから持っている地域性にも影響されます。

さらに、県民性や県教委がどれだけ強い影響を持っているか、市区町村の教育委員会がどれほど強く「要望」を各学校に伝えているかなどによっても違ってきます。

そして、国や県、市区町村からの要望の受け手である校長が、何を重視するタイプの人材かによって、大きく左右されると言われています。

もちろん、現場でもっとも長く子どもと接触する担任の先生たちが、教委や校長の意図を重視するタイプか、それとも自分の信念を貫くタイプか、中庸を重んじるかは、とても重要なポイントになります。

学校が何を重視しているかはさまざま

学校は、一応学校教育法第21条に基づき、さらに現行の学習指導要領に従って子ども達を指導していきます。

私立なら個性が強く出るでしょう。しかし全国の公立学校が一律で同じような信念のもと、子ども達を指導しているかというと、そうではありません。 

・学力重視の学校

・地域とのふれあい重視の学校

・福祉やボランティア重視の学校

・スポーツ・文化活動重視の学校 

上記のように、さまざまな偏重が出てきます。

 

学力重視の学校

県単位、あるいは市区町村単位で「学力の向上」を強く打ち出している地域では、各学校も学力重視であることが少なくありません。

国では、義務教育の学力をはかるために、小学6年生と中学3年生を対象に「全国学力調査」を行います。

この調査では、毎年秋田県が上位に入り、そこに追いつこうとさまざまな県がしのぎを削っている状態です。

また各都道府県の多くが、全国学力調査の前に小学5年生と中学2年生を対象にした「全県統一学力テスト」などを実施します。

これらのテストで良い成績を出すため、学力アップを各市区町村教委や学校に強く求める県もあります。

学校によっては、実際に学力調査テストのための模試や補習を行うなど、「学力調査の結果アップのための勉強」を行っているところもあるのです。

また有名私立中学への進学者数、県内にある偏差値70を超える進学校への進学者数で、市区町村内の小中学校が順位争いをしているというケースもあります。

こういった学校では、毎日の宿題が非常に多い、小学校から定期テストがあるなど、「とにかく良い成績を取らせること」が勉強の意味になっていると言えます。

地域とのふれあい重視の学校

地域とのふれあいや、地域の文化継承を非常に大切にする学校もあります。

たとえば地域が昔は蛍の里として知られていたのに、今は生息数が減っている場合など、地域の学校ぐるみで蛍の飼育を行ったり、イベントを開催したりするなどです。

蛍に限らず、コウノトリやメダカ、ニホンザリガニ、サワガニなどの生物をはじめ、その地域にしかいない植物や海の生物などがいると、学校でも大きく取り上げることが多いようです。

さらに自然との共生をテーマに掲げる校長先生がいる学校などでは、ビオトープを校内に造設したり、いろいろな生物を飼育したりもします。

お城や古い史跡がある地域なら、それらの史跡について特別に学んだり、観光客にボランティアで観光案内ができるよう、勉強会を設けたりすることもあります。

さらに遺跡の調査を行ったり、水質調査や河川、山野など学区内の生息動物の調査などを行ったりする学校もあります。

地域に民話や伝承が息づいているなら、民話を紙芝居やカルタにしたり、語り部を養成する部活やコミュニティを作ったりする活動を行ったり、地域によってさまざまな特色が見られます。

福祉やボランティア重視の学校

福祉やボランティア活動を重視する学校は、近年増える傾向にあります。学区内に聾・盲・特別支援学校がある学校では、積極的に交流を行っていることが少なくありません。

現代社会では、「合理的配慮」や「インクルーシブ」「インクルージョン」といった言葉が注目されています。

さまざまな人の個性や特性に合わせて配慮や支援を行い、できるだけ多くの人が同じように社会生活を営み、楽しめる社会にしていこうという取り組みです。

東京オリンピックとともに、パラリンピックやパラリンピアン、パラ競技者にも注目が集まるようになりました。

また介護を必要とする高齢者や、特別支援を必要とする子ども達のための施設が増え、そこで働く人手不足も深刻化しています。

そのため介護士や言語聴覚士といった、社会福祉にかかわる資格を持っていることが就職につながりやすくなって、高校の専門科や専門学校・大学の学部も増えました。

こうした社会の流れを受けて、小学校・中学校でも福祉やボランティアに力を注いでいるところは少なくありません。

中学校だと、地域に病院や介護施設・就労支援事業所などが多い場合は、職業体験で福祉系の職業を選ぶ子どもが多くなります。

また地域に福祉系に強い高校があれば、自然とボランティア活動が盛んになり、小中学校からボランティアスクールやボランティアサークルに参加することも増えます。

小中学校もボランティアに子ども達が参加することを重んじ、地域の社協などが開催するボランティアスクールやサークルへの参加を積極的に促します。

スポーツ・文化活動重視の学校

スポーツや文化活動など、主に部活動やクラブに力を入れている小中学校も存在します。

伝統的に野球やサッカーが強い、地域に強豪スポーツ少年団(スポ少)がある場合などは、学校も力を入れますし、保護者も積極的にスポーツを習わせる傾向にあるようです。

スポーツは野球やサッカーをはじめ、バスケやバレー、水泳、卓球など多岐にわたります。子どもにそういったスポーツを本格的に習わせたいため、住居を決めるときに強豪クラブのある地域を選択するケースもあります。

文化活動は、絵画や俳句・短歌・書道・コーラス・ブラスバンド・マーチングバンドなど、やはり多岐にわたります。

スポーツや文化活動は、小学校、中学校、同じ地域にある高校と続いていくことも少なくありません。

こうした活動が盛んな地域では、高校への進学や、部活動の選択なども念頭に入れつつ、こうした活動への参加を考えることも重要になってきます。

親は子どもにどんな「勉強」を望んでいる?

学校によって異なる特色についてご紹介してきましたが、いずれにしても学校の本分は「勉強」です。地域活動やボランティア、スポーツなどに特化していても、勉強をおろそかにすることはありません。

それでは、保護者・親はどうでしょうか。我が子たちがどのような勉強をすることを望んで、学校に通わせたり、習い事をさせたりしているのでしょう。

「高校進学は当たり前」の世代から「大学進学は当たり前」の世代

今、小学生や中学生の子どもを育てているママパパは、「高校進学は当たり前」という時代から、「大学進学は当たり前」という時代へと変わっていく時期に子ども時代を過ごしています。

幼児期・小学生のころには高校進学が当たり前の時代だったのが、自分たちが大学生になるころには大学進学が当たり前の時代になっていたのではないでしょうか。

また何十もの会社を受けても内定がもらえない、超氷河期世代のママパパも少なくないでしょう。

そして、夫婦で働きながら子育てをしている核家族という家庭も、当たり前となりました。

進学の男女差は無くなり、ほとんどの子どもが義務教育のように高校・大学へ進んで就職する時代です。

今の親世代が考える子どもの行く末

そんなママパパ世代は、大きくふたつのタイプに分かれると言えます。

 

・我が子にはできるだけ良い学校へ進み、順調に就職して欲しい
・どんな逆風が吹いても困らないよう、手に職をつけたり資格を取ったりしてほしい

 

国家や都道府県の中枢に近いキャリアや士業、大企業での出世コースに乗るために、学歴が重要だと考えるタイプがひとつです。

そして、学歴社会は終焉を迎えるだろうから、どんな社会になっても必要とされる技術や資格を身につけてほしい、というタイプがもうひとつです。

今の子ども達が30~40代になる頃を予言できる人はいない

我が子にどんな道を歩んでほしいと願っても、我が子が自分たちと同じ年齢になる頃、日本や世界がどんな状況になっているかを予言できる人は誰一人いません。

つまり、学歴社会がどれほど通用するのか、技術や資格がどこまでAIによって駆逐されてしまうのかは、誰にも判らないのです。

子どもの将来の安定性を考えてとにかく勉強をさせたり、親の考える「安定的な職業」につながる道を歩ませたりすることが実を結ぶかどうかも、不明です。

 

どんな「人間」になってほしいかを考えてみよう

ここでもう一度、学校教育法の第21条に戻って考えてみましょう。学校教育法では、エリートやキャリアを育てたり、絶対に安定的な将来を手に入れたりするために、義務教育を定めているわけではありません。

いずれ社会に出た時に、この世がどのようなシステムになっているかをきちんと把握できていて、その知識や理解に従い正しい道や処理・処置・判断を選べる「社会人」を育てることが、義務教育の目的だったはずです。

勉強をするかしないか、できるかできないかには、個人差があります。また子どもがどんな道を歩むかは、親が決めることではありません。

中学を出る時までに、自分である程度の方向性を見据えてその後の勉強を続けること、そして具体的にどんな道を歩むかを決断することができる「大人」に必要な知識・理解のために、義務教育があり、勉強をする意味があるのです。

勉強は生きていく道を選ぶためにさせるもの

学校の方針や周囲のパパママの教育熱などに振り回されてしまうと、「なぜ子どもに勉強させるのか」という意味を見失ってしまいます。

「次の中間テストで10番以内に入るために」「お隣の子よりいい高校・大学に入るために」「レギュラーになれるように」勉強や習い事をさせてしまうこともありますよね。

しかし親に与えられた義務は、子どもの心身の安全・健康を守り育て、自分で正しい判断ができ、社会の一員として「みんなの幸せ」を支えていく社会人として、世に送り出すことです。

親が子どもにしてやれること、社会に出るまでに学ばせたいことは、目的さえしっかりしていればおのずと判ってくるのではないでしょうか。
 

  • 2020.1.7
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