教育について
【子どもの習い事】栃木県の教育施策から見る学習・習い事への親の関わり方
栃木県には、県でまとめられた『教育施策』が存在します。子ども達の教育について、県や自治体がどのような政策を行っていくかをまとめたものです。ここには、栃木県が目指す教育の方針が記されています。
栃木県の『教育施策』から見えてくる、県の目指す教育とは何か、そして学習や習い事を通して、親はどう関わっていけばよいのかを考えてみましょう。
栃木県の教育施策にある「栃木県の教育理念」とは
栃木県の教育施策には、2016年から2021年までの5年間にわたる、教育関係の栃木県の事業や、教育関連政策・運動などが詳細に記されています。どんな内容なのか、少し内容をご紹介します。
「栃木県教育振興基本計画2020 -教育ビジョンとちぎ-」について
教育基本法に基づき、子ども達の教育や学びについて、2016年から5年間にわたる栃木県教育行政の基本的な方向を定めた計画です。これが、現在栃木県のもっとも重要な教育施策となっています。
一人一人の「人格の完成」を目指す「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」の育成を期す
教育基本法で定められている「教育」を基盤として、栃木県では以下の2点を定めました。
①とちぎの子どもたちが、自己実現を目指して生涯にわたり学び続けていけるようにすること
②主体的に社会に参画してこれから先の未来を自分たちの手でともに創造していけるようにすること
さらに、教育の基本理念・基本目標も定められています。
とちぎから世界を見つめ
地域とつながり 未来に向かって
ともに歩み続ける人間を育てます
学びの基盤をつくる
志を立て未来をつくる
育ちあえる絆をつくる
基本目標3つに、それぞれ関連する5つずつの基本施策が設けられ、15の基本施策がそれぞれ連携をとりつつ目標達成を目指す、という施策になっています。
さらにこれら15の基本施策を実施させるための教育環境づくりとして、5つの政策が定められました。
①教育の資質・能力の向上
②学校の指導体制の整備
③社会の変化に対応した特色ある学校づくり
④学校施設・設備の整備と学校の安全管理
⑤青少年教育施設とスポーツ施設の整備
学校の安全管理やスポーツ設備の整備など、近年の社会問題や社会の関心事も盛り込まれています。
教育の基本目標にもとづく15の基本施策
それでは、3つの基本目標にもとづく15の基本施策を挙げてみましょう。
1.学びの基盤をつくる
①確かな学びを育む教育の充実
②豊かな心を育む教育の充実
③健やかな体を育む教育の充実
④特別支援教育の充実
⑤幼児教育の充実
2.志を立て未来をつくる
⑥自分の生き方を考える教育の充実
⑦地域についての理解を深める教育の充実
⑧伝統や文化に関する教育の充実
⑨グローバル化に対応した教育の充実
⑩社会に参画する力を育む教育の充実
3.育ちあえる絆をつくる
⑪人権尊重の精神を育む教育の充実
⑫県民一人一人の生涯学習への支援
⑬学校・家庭・地域の連携による教育の充実
⑭地域全体で支える家庭教育への支援
⑮スポーツを通じた教育の充実
県では、子ども達、そして青少年の学びのために、これらの施策を打ち出し、すでに実施しているものもたくさんあります。
栃木県の「子どもの心の教育」推進事業
栃木県では、子ども達の心の育ち、中でも以下に挙げる「人間として重要な心の育ち」の弱まりを懸念し、「心の教育」の推進にも力を入れています。
・生命を尊重する心
・美しいものや自然に感動する心
・他者への思いやりや社会性
・倫理観や正義感
栃木在住の方なら一度は目にしたことがある、「生き生き栃木っ子3あい運動」と、心の教育を絡ませながら、日々の教育が行われています。
学びあい 喜びあい はげましあおう
「心の教育」推進方針
①「いきいき栃木っ子3あい運動」を一層推進することにより子どもの豊かな人間関係の醸成に努める。
②すべての学校、家庭、地域社会において「心の教育」を推進するとともに、県民に対する啓発に努める。
③学校教育においては、道徳教育及び人間としての在り方生き方教育はもとより、すべての教育活動を通して豊かな心を持つ児童・生徒を育てる「心の教育」の充実に努める。
④社会教育においては、家庭における「心の教育」への支援を充実するとともに、地域社会における「心の教育」の推進に努める。
⑤さまざまな悩みを抱える子どもに適切に対処するための教育相談事業を充実するとともに、教員の指導力向上のための教育相談研修の充実に努める。
栃木県教育委員会は、学校、家庭、地域社会、関係機関等と連携・協力し、とちぎの子どもの豊かな心をはぐくむ「心の教育」を推進
うちの子・よその子・栃木の子、みんなで育てて明るい未来
・「あいさつ」の輪を広げよう
・「本の時間」をつくろう
・人に迷惑をかけることは「ダメ」と言おう
栃木県では、生涯学び続ける知的好奇心と、他人を慮れる情緒豊かな心を持つ「人」を育てるために、学校をはじめさまざまなシーンですでにさまざまな改革を進めています。
栃木県教育施策の習い事や家庭教育に関するポイント
栃木県教育施策の中で、習い事に関わってくるポイントはあるのでしょうか。学校教育以外にも関わる点を探してみましょう。
放課後子ども教室推進事業
放課後に、学校と家庭、地域の連携協力推進事業として進められているのが、教育支援活動促進の一環である『放課後子供教室』や『放課後児童クラブ』です。
同じようなシステムとして捉えられていますが、厳密に言うと管轄省庁が異なります。
『放課後子供教室』…文部科学省
『放課後児童クラブ』…厚生労働省
このふたつの事業を、『放課後子どもプラン』として連携させ、子ども達の学習支援や体験活動・交流活動に活かそうという動きが、今全国レベルで行われています。
実際に、約6割の教室で学習支援として宿題の指導や読み聞かせなどが行われており、工作や実験教室・スポーツや文化活動などの体験活動も実施されています。
地域ボランティアの人々と自由に遊んだり、高齢者から昔遊びを教わったり、教室単位で地域行事に参加するといった交流活動も盛んに行われています。
夫婦共働きで習い事をさせるための送り迎えが困難という家庭や、経済的理由から外部の習い事が難しいという家庭でも、放課後子ども教室推進事業を活用することで、学習サポートや「みんなで育てる育児」サポートを受けることができます。
確かな学力の育成と教育環境の整備
働き盛りにあるパパママ世代は強く実感するところですが、現代では社会に出たからといって安泰で変化のない日々が続くわけではありません。
自らさらなる高みを目指してさまざまなことを学び続け、スキルを広げ磨き続けなければ、どんどん変化する社会に対応しきれず、職場でも能力を発揮しきれませんよね。
こうした目まぐるしく成長を続ける社会に対応できる大人として巣立ってゆくために、子ども達には確かな学力が求められています。
またそれを支えるための教育環境の整備も進められていますが、すべての学校で先生の質が一定以上に保たれているか、というと難しい点もあります。
そのため、家庭でも子どもの学力の伸びをしっかり把握し、今後の社会で活躍できる能力と、より高みを目指せる知的向上心、忍耐力などの底上げを支えていく必要があります。
最初は親が家庭内の「学習に合った環境」を整え、「学習するための時間」を、生活リズムを整える中で作ってあげましょう。
家庭学習の習慣づけも、毎日連絡帳をチェックして宿題ができているか確認したり、教科書音読に数分付き合ってあげたりするだけでも大きく変わってきます。
グローバル人材の育成
2020年には学習指導要領の改変があり、小学校中学年から英語教育がスタートします。また今は英語と英語文化に触れることが目的である高学年の英語の授業が、本格的な教科となります。
2020年の東京オリンピックに向けて、全国各地でインバウンド(来日する外国人)が増えています。
また、ビジネスシーンでも、英語が公用語として使用されている企業があるなど、英語を普通に話せる語学力を持つことが求められています。
こうした国の施策を受けて、栃木県でもグローバル人材の育成に力が入れられています。外国への留学イベントや、留学生との交流イベントも各種開催されています。
インターナショナルな英語教育を行う幼稚園もあり、大変人気があります。子どもが英語と日本語を聞き分ける能力は9歳ごろまでがピークと言われており、できるだけ早めに英語に触れさせたい、慣れさせたいと考える家庭も増えています。
英語教育の方法もさまざまあり、多額の資金がかかるものから、家族ぐるみで取り組むことでカバーしていけるものまで選択肢は豊富です。
「語学は3歳までに始めた方がいいってみんなが言っているから」といったネットの情報に踊らされるのではなく、我が子がどんな方法なら楽しく語学を学べるか、家庭でもサポートしつつ長く続けられるか、じっくり見極めてから選びたいですね。
スポーツを通じた人づくり
スポーツを通じた人づくりは、年齢を問わず栃木県内各地で盛んに行われています。小学生からのリトルリーグの大会も活発ですし、高齢者のスポーツサークルもたくさんありますね。
スポーツを通じて、いろいろな年齢層の人々や、立場の違う人々とのコミュニケーションの測り方を学ぶ事ができます。
仲間と研鑽して日々努力を積み重ねることで、「一回戦を突破する」「県大会で優勝する」「日本一になる」など、チームそれぞれの目標を達成する喜びを知る事にもつながります。
もちろんスポーツは体力づくり、健康づくりにも欠かせません。学校で文化系の部活に入るという子どもは、スイミングや柔道など多くの子どもが通っているスポーツの習い事を一度経験しておくと良いかもしれません。
スポーツは近年研究が進み、さまざまなことが分かってきました。それとともに、学校の部活動で教えられる健康とスポーツの関係も、重要なことが増えています。
・スポーツと成長期の栄養の取り方の関係
・スポーツを行うにあたって必要なストレッチや筋力トレーニングの方法
・クールダウンの方法
・筋肉の超回復に必要な休息のこと
・怪我をしにくい筋肉や腱の使い方
・熱中症や脱水症状を防ぐ水分・電解質補給の方法
本格的に一度スポーツを習う事で、こういったことを知る機会も増えます。大人になってジムに通えば教えてもらえますが、実際は忙しくて通えないということも少なくありません。
子どものうちから学んでおくことで、生涯自分の足でしっかり歩けるトレーニングの初歩からスタートすることにつながります。
文化を通じた人づくり
楽器演奏や歌、絵画や版画、文学、木工細工など、文化を通じた人づくりも、県の教育方針のひとつです。
文化に触れるということは、心を磨くことにつながります。心の琴線に触れるものに出会い、自らの中にある「会話だけでは伝えきれない、複雑かつ形の掴めない想い」を表現する力を高めます。
この世にはさまざまなうつくしいものや悲しい出来事、歴史あるものなどがあって、心を磨けば磨くほど、それらに出会った時に得るものも広く深くなっていきます。
そういった「心を磨き、鍛え、伝え、知る」体験をたくさん積むことで、感受性はどんどん豊かになり、他人の心の機微を慮ることができる「優しさ」を培うことにもつながります。
「思いやり」は「想像力」と深く関係しています。たとえば、いじめられる子の悲しさや悔しさ、つらさや絶望感を我がことのように想像できる子は、きっといじめの加害者となることを拒むでしょう。
他人のつらさや苦しさを我がことのように想像できる子は、泣いている子に寄り添い、理由を訊ね、その子と痛みを分かち合うことができるのではないでしょうか。
親ができることはすべての基本「心の教育」の基礎を築くこと
栃木県教育施策の重要なポイントのひとつが、豊かな心を持つ人を育てる「心の教育」です。いじめを防ぎ、さまざまな悩みを抱えても誰かとそれを分かち合い、乗り越えていく力を持つ心の持ち主を育てることです。
・学校や学校カウンセラーと家庭が連携する
・習い事で情緒を育む
・子どもの心の育ちについて家族で話題にしていく
・親は子どもの悩みやつまずきを受け止め、否定するのではなく一緒に考える
・習い事の先生とも家庭が連携をとり、心の育ちについて相談してゆく
・子どもの考え、学校の担任やカウンセラーの話を、習い事の先生とも共有する
このすべてをこなす必要はありません。できる範囲で構わないのです。親が家庭で少しでもこうした取り組みに注力していくことで、子どもも親を「相談できる、受け止めてくれる」と信頼できるようになっていきます。
親だからといって、無条件で子どもに信頼してもらえるわけではありません。子どもは、信頼する親がいる家を「いつでも帰れるホーム」に持つことで、巣立つ勇気を得て、自由に羽ばたけるようになります。
子どもの話に耳を傾け、無下にせずまずは受け止め、その上で共感する姿勢を見せることで、子どもの信頼を得ることができます。さらに「心の教育」の手本となることにつながっていくでしょう。
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- 2019.6.18